「英語を書き取るだけのディクテーションなんて意味ない?」
「そもそもディクテーションってどうやるの?」
ディクテーション(Dictation)とは、英語を聞いて書き取りをする英語学習法のひとつです。
リスニング力をはじめ、総合的な英語力を効率よく高める効果が期待できます。
その一方で、間違ったやり方をしてしまうと、ただ時間ばかりかかり、たいした成果もないまま挫折する人が多い勉強法でもあるのです。
そこでこの記事では、正しいディクテーションのやり方や、挫折しないために気をつけたいポイントを紹介します。
ディクテーションに初めて取り組む、という初心者の方でも活用できるおすすめの教材も紹介していきますので、ぜひチェックしてみて下さい。
正しく、そして楽しんでディクテーションにチャレンジしてみましょう!
- 執筆者:Lin
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小4までアメリカの現地校に通い、帰国後は「英語はネイティブ並みでしょう?」という周囲の誤解とプレッシャーゆえに、英語の勉強から遠ざかった過去あり。中途半端な英語力にコンプレックスを感じ、大人になってから再勉強。英検1級。ケンブリッジ英検CAE。TOEIC910点。さらに英語指導者(TEFL)や児童英語指導者(TEYL)の資格を持つ。プロフィールの詳細はこちら
目次
ディクテーションとは?
ディクテーション(dictation)とは、日本語で「書き取り」という意味をもつ言葉です。
特に語学学習においては、口述された言葉を聞き取り、書き取る訓練法を指します。
言葉や文章を正確に聞き取るリスニング力、そして言葉を正確に書き取る力を鍛えることができ、やり方次第では初心者から上級者まで幅広く英語力を上げられる学習法です。
ディクテーションは意味ない?ディクテーションの学習効果
耳で聞き取った言葉を、手を使って文字に書き起こすディクテーションは、「英語のリスニング力が上がる」「自分の弱点がわかる」「スピーキング・ライティング能力が向上する」といった学習効果が期待できます。
英語のリスニング能力が上がる
ディクテーションの最大の学習効果はリスニング力アップです。
一言一句、細部まで集中して聞くため、これまで無意識に聞き落としていた箇所なども、繰り返すうちに聞き取れるように必ずなります。
自分の弱点がわかる
ディクテーションに取り組んでいると、自分の弱点が嫌でもわかります。例えば「th」と「s」、「b」と「v」の聞き間違い、完了形have、複数形sの聞き落としなど「どこが聞き取れなかったのか」が明白になります。
ディクテーションの回数をこなすうちに、自分のミスがパターン化されていること、同じミスを繰り返していることに気づくかも知れません。
自分の弱点に気づくことができれば、あとは改善するだけ。同じミスをしないように気をつけることで、大きくリスニング力を伸ばすことができます。
スピーキング・ライティング能力が向上する
ディクテーションが効果的なのは、リスニング力アップだけではありません。
ディクテーションはまず正確に聞き取る訓練です。正確に聞き取れる、ということは正確に発音できることにつながり、スピーキング力に影響します。
また正しい綴りや語法を意識して書き取る訓練でもあるので、当然ながらライティングの勉強にもつながっていきます。
ディクテーションはTOEICやTOEFLの対策に効果がある?
ディクテーションは効果の高い勉強法ですが、残念ながら「今日取り組んで明日のテストで点数が大幅アップする」「いきなりネイティブの英語が100パーセント聞き取れるようになる」といった即効性はありません。
即効性という意味では受験日や、目標スコアの決まっているTOEICやTOEFLの対策に「すぐ」効果があるかと言うと、私は「ない」と思います。
しかし「何度受けてもスコアが頭打ちで伸びない」「リスニングパートで常に6割くらいしか得点できない」といった停滞ムードに悩む方は、ディクテーションを日々の勉強に取り入れることで英語力の底上げができ、結果的にスコアがアップしていくでしょう。
TOEICが伸び悩んでいる方は、「TOEICのスコアが上がらないときの対処法」の記事が参考になるでしょう。「TOEFLリスニングの勉強法」も別記事で詳しく解説しているので、こちらも参考にしてみてください。
初心者にもわかるディクテーションの正しいやり方
ではディクテーションとはどのように行えば良いのかを見ていきましょう。
基本は「聞き取る」「書き取る」「確認する」のサイクルを、下記のステップで行います。
ディクテーションのやり方
- 英文(スクリプト)を見ないで音声を聞く
- 音声を止めながら聞き、聞こえた単語を書き取る
- ステップ2を何度か繰り返す
- 英文と自分が書いた文を見比べ、答え合わせをする
- 正しい英文を聞き、繰り返し音読する
1. 英文(スクリプト)を見ないで音声を聞く
まずは英語音声を聞きます。何が書かれている文章なのか、大意を取ります。
このとき英文原稿(スクリプト)は見ません。
初めて取り組む、という場合は無理せずなるべく1文1文が短めな原稿を選ぶことが大切です。
2. 音声を止めながら聞き、聞こえた単語を書き取る
センテンスの終わりがきたら、音声を止め、ここまでに聞こえた英文を書き取ります。
書き取るのが間に合わず、単語ごとに音声を止めて聞きたくなるかもしれません。
しかしステップ2の段階では「我慢してセンテンスの終わりまで聞く」「センテンスの途中で音声は止めない」ことを意識してみましょう。
聞き取れなかったところは、四角の枠を書いておいたり、線を引いておくのでも良いので「何か」があったことだけ書いておけばそれで十分です。
3. ステップ2を何度か繰り返す
ステップ2で書き取った内容を、もう一度音声を聞きながらチェックしていきます。
1回目で聞き落とした箇所がないか、正しいスペルで書いているか、細かいところまで確認してブラッシュアップさせましょう。
修正箇所は消しゴムで消すのではなく、推敲結果がわかるように上書きをしていきます。
この「編集履歴」を残すのは、自分の聞き取り・書き取りのクセを自覚するためにとても大切なことです。
この段階では、必要に応じて単語ごとに音声を止めて聞くこともOKです。耳から聞こえた音を、可能な限り正確に書き取りましょう。
ステップ2・3を納得がいくまで繰り返して、書き出した英文の精度を上げていきます。最低でも3回は音声を聞いてみて下さい。
4. 英文と自分が書いた文を見比べ、答え合わせをする
自力で書き上げた原稿が完成したら、元原稿との違いを確認していきます。
色の違うペンを使って、間違えた箇所を修正していきますが、ここでも自分が書いた原稿を消さずに、編集履歴を残します。
文章全体をよく確認し、同じようなミスをしていないかもチェックしましょう。
「自分にはこう聞こえていたけれど、本当はこういう言葉だったんだ」という気づきを持ち、「なぜ」聞き取れなかったのか、を自覚することが大切です。
5. 正しい英文を聞き、繰り返し音読する
元原稿の英文スクリプトを手元におき、文字を目で追いながら音声を再度聞いてみましょう。1回目、初めて音声を聞いたときよりも、格段に聞こえやすくなっているはずです。
さらに学習効果を上げるために、自分でも英文を声に出して読んでみましょう。
初心者の方は、元原稿を自分のスピードで読み上げる音読からスタート。
つかえずにスムーズに読めるようになったら、音声に合わせて音読をするオーバーラッピングにチャレンジしてみましょう。
上級者の方は、原稿を見ないで耳から聞こえた音声をすぐに復唱するシャドーイングをしてみて下さい。
ここまで紹介した基本的な流れをこなせば、ディクテーションができます。さらに学習効果を高めるために、コツを紹介しましょう。
ディクテーションの効果を高めるコツ
ディクテーションは「聞き取る」「書き取る」「確認する」を繰り返すシンプルな勉強法です。
しかしそのシンプルさゆえに、やり方を間違えてしまうと時間ばかり取られ、勉強した気にはなるもののあまり効果が出ない、という残念なことになりがち。
せっかく取り組むなら、効果をしっかり感じたいですよね。ここではディクテーションの効果を高めるコツをお伝えします。
単語ごとではなく文章として聞き取る
ディクテーションは正しく聞き取り、正しく書き取る訓練ですが、その「正しさ」を追求するあまり、最初から最後まで音声を単語で区切って聞いてしまうのはNGです。
これでは単語の正しい綴りができているかを確認するだけの、単なる「スペリングテスト」です。
スペリングテストをどれほど繰り返しても、英語力そのものは向上しません。言葉というものは、正しく「綴れる」ことも大事ですが、それ以上に重要なことは、正しく「使える」ことです。
日本語でも、たくさんの漢字や熟語を正確に「書ける」だけでは不十分。言葉の意味を理解し、実際にどのような使われ方をするのかを、小学校などでも例文を用いて学んでいくはずです。
ディクテーションで用いる英文は、まさに生きた例文です。
英語力を効率よく向上させるために、前後の言葉との関係を意識しながら正しく聞き取り、正しく書き取ることを意識しましょう。
聞こえた通りにまずは書いてみる
初めて本格的なディクテーションに取り組むと、ほとんどの人は「聞く」と「書く」をほぼ同時に行わなければならないディクテーションの難しさを思い知ります。
1回目で完璧に聞き取れる、書き取れることはまずあり得ないでしょう。ここで「自分はなんてダメなんだ」と落ち込む必要はありません。大丈夫です、ダメではありません。
でも、ここで「全然聞き取れない」「全然書き取れない」と嘆くだけで、何も書き残さないのは「ダメ」です。
正確なスペルがわからなければ、ローマ字表記でも、カタカナでも良いので書きましょう。
それさえも思い浮かばなければ、丸や四角などの記号でも十分です。とにかく「何か」が聞こえたことを書き記すことが大切です。
2回目に音声を聞く際には、この記号の箇所を重点的に聞くようにします。漫然と聞いていた1回目とは聞き方が変わることがわかるでしょう。
何か新しいことが聞き取れれば、それを追加・修正します。
ディクテーションのポイント
1回目で聞き取れなかったことを、2回目で意識的に聞き取る。
2回目で聞き取れなかったことを3回目で……と回数をこなすことで、最終的に完璧に近い原稿を仕上げる。
これが正しく学習効果があらわれるディクテーションのやり方です。
もし1回目で何の記号も書き記さなければ、2回目でどこを重点的に聞けば良いのかがわかりません。これでは3回、4回と聞いてもまた聞き逃します。
このようなやり方ではディクテーションの学習効果はあらわれません。
1回目で完璧に聞き取れないのは当たり前です。大切なことは「どこを重点的に聞けば良いか」というヒントを得ることです。そのためには「何か」を書き記すことを頑張ってみましょう。
自分の弱点を分析する
ディクテーションに取り組んでいると、嫌でも自分の弱点を知ることになります。
なぜ正しく聞き取れなかったのか、正しく書き取れなかったのか、を自分なりにしっかり分析しましょう。
同じ「聞き取れなかった」でも、「まったく知らない言葉だった」からなのか「知っている言葉だったのに違う言葉に聞こえた」からなのかで、とるべき対策は大きく違います。
弱点がわかれば、あとは対策をとり実行するだけです。自分の足りていないところを直視するのは勇気がいりますが、英語力を上げる近道となります。
仕上げにオーバーラッピングやシャドーイングをする
ディクテーションをして細部まで聞き取った英文は、ぜひ仕上げとしてオーバーラッピングやシャドーイングをして自分の口から発してみましょう。
細かい発音の違い、冠詞、時制などにも注意を払って聞き取り、書き取った英文なのですから、初見の英文とは比べものにならないほど理解が深まっているはずです。
口に出さないなんて、もったいないにもほどがあります。オーバーラッピングやシャドーイングも合わせて行うことで、ぐっとリスニング力も上がりますよ。
いろいろとコツを試しながらディクテーションを進めていくと、うまくいかないことがあるかもしれません。そんなときは、次に紹介する原因にあてはまるものはないか、確認しましょう!
ディクテーションがうまくできない原因と対処法
ここではディクテーションがうまくできないときの原因と、その対処法を考えていきます。
スピードが早すぎて聞き取れない
全体を通して英文のスピードが早すぎて聞き取れない場合、英文のレベルが自分の英語力に合っていません。現在の自分の英語力で、楽に理解できる英文を選びましょう。
部分的に聞き取れない箇所がある場合を除いて、再生スピードを調整するのはあまりおすすめできません。不自然な発音となるからです。
速度を落としても×0.7程度、最後には標準スピードに戻して聞き直す、などを心がけましょう。
単語や表現を知らなかった
知らない単語や表現が、教材として選んだ英文のなかに3つ以上あった場合も、英文のレベルが自分の英語力に合っていません。
知らない言葉は聞き取れなくて当たり前です。ディクテーションには辞書無しですんなり読める英文が適しています。
ディクテーションの教材を選ぶ際に、知らない単語が3つ以上ないか、さっと確認してから取り組むようにしましょう。
また、単語は知っているが、句動詞やイディオム的な使い方を初めて知る場合もあるでしょう。これは良いインプットの機会と心得て、覚えてしまえると良いですね。
単語の発音を間違って覚えていた
机上で覚えた単語などの場合、頭のなかで想像していた発音と実際にネイティブがする発音がイメージ通りではないこともあるでしょう。
これにより、聞いた通りに書き取りをしてみるものの、正しい単語で書き取りができないことがあります。
ですが、ディクテーションをしていて、ネイティブの発音と自分が想像していた発音の違いに気がついたときは、「正しい発音」を覚える良い機会です。
次に同じ単語が出てきたときに、同じ間違いをしないようしっかり覚えておきましょう。
発音の変化が聞き取れなかった
ネイティブが話す自然な英語は、言葉と言葉がつながって聞こえることがあります。
例えば「look out」という言葉は「るっく」と「あうと」2語ではなく、lookの語尾kとoutの語頭oがつながって「るっかうと」という1語に聞こえるでしょう。
こうした音声変化を一般的にはリエゾン(リンキング)などと表現します。
リエゾンをノンネイティブが習得するには、ただひたすら音声を「聞く」そして音声変化が起きていることを文字上で「確認する」ことが必要です。
「聞く」「書く」「確認する」を学習の柱とするディクテーションは、ある意味音声変化を理解するには最適の勉強法とも言えます。
音声変化が起きている箇所をしっかり目視できるようになると、リスニング力は一気に向上しますよ。
書き取りが間に合わない
そもそも英文を聞きながら文字を書き取るのは、簡単なことではありません。書き取るのが間に合わない、というお悩みもよく聞きます。
まず文字は自分が読めれば良いのですから、丁寧に書く必要はありません。
殴り書きで大丈夫です。手書きが間に合わなければ、タイピングで書き取りをしても良いでしょう。
大事なことは「自分が何を聞き取ったか」という記録を残すことです。
ディクテーション教材の選び方
ディクテーションの勉強に活用できる教材はたくさんあります。どのようなものが適しているのかを見ていきましょう。主なポイントは、以下の3つです。
教材選びのポイント
- 英文スクリプト(台本)がついた教材を選ぶ
- 自分の力より少し易しめの教材を選ぶ
- 音声速度を変えられる機能がついた教材を選ぶ
英文スクリプト(台本)がついた教材を選ぶ
音声だけでなく、原稿となる英文スクリプトがついている教材を選びましょう。
ディクテーションでもっとも大切なのは、最後の「答え合わせ」です。
そのためには正確なスクリプトが絶対に必要となります。日本語訳は必要ありません。
日本語訳がないと文章の内容が理解できない時点で、教材のレベルが合っていません。
自分の力より少し易しめの教材を選ぶ
辞書を引かなくてもすんなりと大意が理解できる、そして知らない単語がひとつもない、というのがディクテーションの教材として適したレベルです。
普段読んでいる英文よりもかなり易しめに感じるかもしれませんが、そもそもディクテーションはアウトプット訓練。
すでに自分のなかにある英語を、どれだけ形にできるかのトレーニングです。「知らないこと」「新しいこと」は必要ありません。
「正確に」聞き取り、書き取る練習はまずはこの易しめレベルからスタートさせましょう。
音声速度を変えられる機能がついた教材を選ぶ
ディクテーションでは、何度も音源を流します。何度聞き直しても聞き取れない、もしくは意味のある言葉として書き出すことができない場合も当然出てきます。
そのような時に便利なのが、音声速度が変えられる機能がついた教材です。
あらかじめ速度を落とした音声と、普通スピードの音声を交互に再生できるものもあれば、必要に応じて自分で速度を調節できるものもあります。
前者のほうがより初心者向けですが、自分にとって使いやすいタイプを選びましょう。
「教材を探すのが難しい!」という方は、次にディクテーション初心者におすすめの教材を紹介するので、こちらを参考にしてください。
ディクテーション初心者におすすめ教材と使い方
初めてディクテーションに取り組む方にも使いやすい、おすすめ教材を紹介していきます。
無料で利用できるTED
TED:Technology Entertainment Designは世界的な講演会を主催する団体で、提供するウェブサイトやアプリからは様々な分野の専門家による講演会の動画が無料で視聴できます。(TED: Ideas change everything)
英語学習者向けに作られたものではないため、語彙、表現、発音などの幅が広く、その分レベルは高くなりますが「普通の人が話す普通の英語」に触れるには最適な教材です。
ディクテーション初心者は、まずはTEDの教育動画TED Edのものがおすすめです。
一般スピーカーではなく、プロのナレーターによる読み上げ音声なのでより聞き取りやすくなっています。
画面上の字幕を出すこともできますが、ディクテーションを行う場合は「Read transcript」から全体の原稿を表示させると使いやすくなります。(Lessons Worth Sharing | TED-Ed)
YouTubeは字幕表示機能を積極的に使おう
YouTubeにはディクテーションの学習に活用できる教材がたくさんあります。自分の興味がある分野の動画で、ぜひディクテーションにチャレンジしてみて下さい。
字幕表示機能をオンにすると、音声の字幕を表示することができます。私が学習用として特におすすめしたいのは、やはり学習者向けに作られた動画です。
使われている語彙・表現が限定されているため、「聞き取る」「書き取る」ことのハードルがぐっと下がります。
また音声スピードも一般的な会話よりも遅めなうえ、プロのナレーターが読み上げているので、初心者にも聞き取りやすいという点もおすすめポイントのひとつです。
YouTube以外だと、英国放送協会BBCが提供する「BBC Learning English」という英語学習サイトもおすすめです。
英国放送協会BBCが提供する英語学習サイトは無料で、初心者から上級者まで使える学習動画がアップされています。
難易度別になっているので、自分の力に合わせて取り組んでみましょう。
CD・音源DL付き参考書
ディクテーションの参考書として、私がおすすめしたいのは茅ヶ崎式方式英語会のテキストです。(季刊LCT47号 July-September 2024)
茅ヶ崎方式英語は、1981年に当時のNHK国際放送記者が創設した英語学習法で、通学型の教室もあります。
国内外のニュース原稿を教材として用い、「聞けない英語は話せない」をスローガンに徹底したリスニング訓練を行います。
その内容はまさにディクテーションそのもの。「聞き取る」「書き取る」「確認する」の繰り返しで、英語力そのものをじっくり上げていきます。
内容は時事ニュースですが、学習者向けに使用語数を厳選し4000語に限定したうえで編集し直しています。私が勉強していた頃は、音声は付録CDでしたが、今はQRコードで簡単に音声データがダウンロード可能です。
かなりストイックですが、本気で英語力を上げたいと思う方には一度は手に取っていただきたい参考書です。
洋楽や映画を使ったディクテーション
洋楽を聞いたり、映画を観たりしているときでも、ディクテーションのチャンスはあります。
気に入った歌詞や役者のセリフを書き取ってみましょう。答え合わせはネットの歌詞検索や字幕で行えます。
洋楽や映画の英語は、一般的な会話以上に、より音のつながり(=リエゾン)が多発する、役柄によってアクセントが強くなる、など初心者にはハードルが高いところもあります。
しかし、これまで「なんとなく」音として聞いていた言葉をきちんと文字に起こすことは、必ず英語力アップにつながります。
初心者にも使える!ディクテーションアプリ
ちょっとした隙間時間にもディクテーションに取り組める便利なアプリを紹介します。
しかし本音を言えばディクテーションは本来、まとまった量の文章を集中して聞き取り、書き取ることで学習効果が上がるので、隙間時間向きの学習法とは言えません。
普段の勉強の復習や補完として、アプリを活用してみて下さい。
NHKラジオ英会話をいつでもどこでも学べる「ポケット語学」
ポケット語学は、過去に放送されたNHK英語講座のテキストと音声がひとつになったアプリです。
入門レベルからビジネス上級レベルまで、7つの講座が月額約899円(税込)で聴き放題な上に、理解度チェッククイズなどで学習をサポートしてくれます。
※ 月額約899円(税込)は、年間プラン一括払い(10,780円)を、ひと月換算した料金です。
さらに学習内容の定着を集中的に行える「スペシャルコース」では、単語力強化、キーフレーズ特訓など、自分が強化したい分野を選んで取り組むことができます。
ディクテーションも行えるので、ぜひトライしてみて下さい。初回7日間は無料で体験できますよ。
ちなみに、アプリをダウンロードしてからアプリ上で申込むこともできますが、公式サイトから申し込むよりも料金が高くなってしまうので、公式サイトからの申込みがおすすめです。
単語・イディオムやキーフレーズも覚えられる「スタディサプリEnglish」
スタディサプリEnglishには、英語学習の目的に合わせて選べる「ビジネス英語コース」「新日常英会話コース」「TOEIC® L&R TEST対策コース」の3つのコースがあります。
それぞれのコースで、聞き取った文章をタイピングするディクテーションが行えます。シャドーイングとも組み合わせることで、リスニング力アップにつなげられるでしょう。
その他にも全8つのアプローチで、インプットとアウトプットの総合的なトレーニングが行えます。
月額1,738円(税込)で、これほど充実したコンテンツが利用できるのはスタディサプリだけ。
※ 月額1,738円はスタディサプリベーシックプラン12ヶ月パック一括払い(20,856円)の月あたりの料金です。
オンライン英会話のネイティブキャンプが提供するレッスンを追加できる、「英会話セットプラン」もあるので合わせて活用できると、効率的に学習が進められますよ。
初回7日間は無料で体験できるので、いろいろな機能を十分試してみると良いでしょう。
※無料期間は申込日を1日目とします。
人気リスニング学習サイトが無料アプリになった「ディクトレ」
ディクトレは、ディクテーションを行える人気学習サイト「英語リスニング無料学習館」のアプリ版です。
短い会話形式の音声を聞き取り、聞こえた通りに入力して答え合わせをしていきます。
英語のタイピングの練習をしたい人にもおすすめです。
日本語訳と、重要フレーズ解説が学習の最後に出てくるので、わからなかったところをそのままにせず、知識として定着させることができますね。
iPhone、Androidの両方に対応しており、無料で利用できます。
口コミでも非常に評判の良いアプリなので、Webサイトと合わせて活用しましょう。
TEDを使ってディクテーションができる「TEDICT」
TEDICTは、TEDのコンテンツを使って、ディクテーションにチャレンジできるアプリです。
聞こえた英語を直接打ち込むことができるため、スマホだけでディクテーションが完結できます。
英語学習者向けではありますが、実際の講演会の内容がそのまま掲載されているため、話者のアクセントや話すスピードなど、ディクテーション初心者にはかなりハードルが高い部分があります。
全部完答しようと意気込むのではなく、一カ所でも聞き取れればOKというように、ゲーム感覚で隙間時間にチャレンジしてみるくらいでちょうど良いかもしれません。
アプリは無料で利用できるライトバージョンと、有料版があります。
ライトバージョンは広告が出て、1動画あたりのディクテーションの範囲に制限があります。広告はかなりの頻度で出てくるので、勉強する際に邪魔に感じるかもしれません。
有料版は800円の買い切りとなっており、追加料金はかからないので、テキストを1冊購入したことにして課金するのも良い選択かと思います。(Apple store、Google Play)
挫折しないでディクテーションを続けるポイント
ディクテーションは学習効果がでるまでに少し時間のかかる勉強法です。個人差はありますが、最低でも1ヶ月から3ヶ月は効果を実感するまでにかかるでしょう。
そのため、効果を感じる前に挫折してしまう人も多いのです。
そこで途中で投げ出さずにディクテーションを続けていくために、おさえておきたいポイントを紹介します。
できないことに落ち込みすぎない
私が初めてディクテーションに取り組んだときは、あまりの聞き取れなさに激しく落ち込み、テキストを見るのも嫌になったほどです。
しかしディクテーションは、自分の弱点を直視することから始まる勉強法です。
「できないこと」を見つけられたということは、改善するポイントを見つけたということ。前向きに捉えて自己嫌悪はほどほどにしておきましょう。
一度で完璧を目指さない
いきなり完璧を目指す必要はありません。1回目より2回目、3回目と回を追うごとに英文をブラッシュアップさせていくことに意味があります。
「正確に聞き取ろう」「正確に書き取ろう」と気合いをいれて取り組むのは必要なことですが、気負いすぎてしまうと息切れしてしまいます。
長く続けていくためには、「今回はこれくらいでいいかな」という良い意味での「いい加減さ」も持ちましょう。
そして「聞き取れるまで100回でも聞く」というストイックな方もまれにおられますが、おすすめできません。
10回聞いてわからない英語は、100回聞いてもわかりません。それよりも、「なぜ」聞き取れないのか、その理由をいち早く知り、次に生かした方がよほど効率的です。
個人差はありますが、同じ音源を聞いて書き取りをするのは5回くらいまでが適当だと私は思っています。
少しでもレベルアップしている自分をしっかり褒める
目に見えてディクテーションの学習効果が出てくるのは、早くても1ヶ月から3ヶ月ですが、この間まったく進歩がないわけではもちろんありません。
目に見えない、小さなレベルアップが積み重なって、大きな前進につながっていくのです。
「以前は聞き取れなかった単語が聞き取れた」「以前は聞き落としていた音を拾えた」など小さな進歩をしっかり自分自身で自覚することは、継続の原動力となります。
ディクテーションに関するよくある質問
- シャドーイングとディクテーション、どちらが効果的?
- リスニング力アップを考えた際、効果を感じやすいのはシャドーイングだと私は思います。「資格試験が目前に迫っている」など、集中的・短期的にリスニング力を磨きたい場合はシャドーイングをおすすめします。音源さえあれば、場所を選ばずに取り組める気軽さもシャドーイングの強みのひとつです。
ディクテーションは「勉強を続けているのに英語力が伸びない」という停滞期にある方に特におすすめしたい学習法です。一度取り組んだからと言って、すぐにリスニング力がアップするようなものではありませんが、続けるうちに確実にリスニングだけでなく、英語力全般がぐっと底上げされます。
自分の状況や目標に合わせ、主体的に学習法を選べるようになると学習効率がより向上していきますよ。 - ディクテーションのデメリットは?
- 最大の難点は時間がかかることです。音源を繰り返し聞くので学習自体にも時間がかかりますし、学習効果もなかなかすぐには実感できないでしょう。もうひとつの欠点は、「できていないこと」「足りていないこと」を直視する必要があるので、心が折れることです。しかし、自分の弱点から目を背けていては、いつまでたっても中途半端な状態から抜け出ることはできません。そして付け焼き刃ではなく、時間をかけて磨いた力は、その分長い時間維持することができるものです。ディクテーションは楽な学習法ではありませんが、いずれあらわれる成果を信じて、正しいやり方で地道に取り組んでみて下さい。
【まとめ】ディクテーションは最強のリスニング練習法
この記事では、英語学習法のひとつであるディクテーションについて、具体的なやり方や継続するコツをお伝えしてきました。
ディクテーションは正しく行えば、リスニング力はもちろん、総合的な英語力をワンランク上げることができる最強の勉強法だと私は感じています。
日々の英語学習にディクテーションを取り入れ、英語力アップを目指していきましょう。
オンライン英会話などで定期的に実践練習を行えば、以前より英語の実力が伸びたことを実感でき、モチベーションが更にアップしますよ!